miffue -それはいつかの

2010年8月30日 / F U Y U M O I, ukagaka

すいませんやっぱりまだ続く。最終話は最終話でまた別に書いてる。

「私が当医院、院長の平早深冬です。これから、どうぞよろしくお願いしますね、フィカさん」

──それは、遠い日の記憶。二人の出会いの日まで遡る。

「ええと、コーヒー、お飲みします? クッキーも焼いたので、よければどうぞ」

深冬の笑顔は今と変わらずやさしく穏やかなものだった。口元に笑みをたたえたまま、彼女がお茶の準備のためにフィカに背を向ける。その時だった。

「へェ、アナタこんなところでクッキー焼いたりお茶会ごっこしてたんですね」

深冬の背に、冷たい声が刺さる。わらいのない、わらいのこえ。

「探してたンですよ? アナタ正規の医者になったのと同時にお父様の病院も継がずに消えたんですもん。周りの人も心配してましたね。神隠しにあったんじゃないかとかって」
「?」

ティーカップをチキリと鳴らし深冬は笑みの混じった吐息で返す。

「そしたらこんなところに居たんですね。……次元の穴ですか。噂は聞いた事があったんですよ。この世のどこかにあって、どこにあるか分からない空間の事。そこはどんな世界とも繋がっているらしいですね」

深冬はただ手を動かす。白衣越しに伝わるのは確かな──敵意だ。

「そして、ここには時間の流れがないと聞きます。……ねえ平早先生、アナタはなぜここにいるんですか?」

時間のないその部屋で、時計の刻む針の音が嫌に大きく聞こえた。

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“miffue -それはいつかの” への4件のフィードバック

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