miffue 現在編完結

2011年6月19日 / F U Y U M O I, ukagaka

甘いのとシリアスなのと2パターンありましてどちらを採用するか迷いましたが、シリアスなのはどこで落とし前付ければいいのか全く分からなかったので甘い方を選びました。やっと載せられた…遅くなって済みません。

シリアスな方は別の機会に使います。過去編はまだ続きます。深冬先生難しすぎます。フィカいい子すぎて助かる。(動かしやすい)

miffue
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miffue過去編 それはいつかの

pixiv版
http://www.pixiv.net/series.php?id=42859

 

 

「だーかーらーそんなに笑うなぁ!」

堪え切れずふるふると震えながら笑う深冬を目の前に、フィカは真っ赤な顔で怒る。

「いやぁ、フィーちゃん、本当にかわ、かわいいっ……あはっ、あはははっ」
「にぎゃあーーー! 深冬ばかぁーーー!」
「あはははっ、だってまさかそんな理由だなんて思わないもの」

フィカはやっぱり言うんじゃなかったと呟き、そっぽを向いた。

──先刻、深冬に打ち明けたことを思い出す。

「だ、だって最近の深冬って、髪の毛撫でられるとすごく嬉しそうな顔してるんだよ? 知ってる?」

フィカが赤い顔で拗ねたように吐きだした言葉に、深冬は文字通り首をかしげた。

「……アイツ…アイツが来てからだ。アイツが深冬の頭撫でていたの、私、見たもん」
「はい?」
「で、深冬もアイツの髪を褒めるの。きれいだね、って。時々触れたりするの」
「……ん?」

深冬の胸に顔を埋めるようにしてフィカはか細い声で続けるが、そうされている本人は会話の意味が掴めず首をかしげている。

「い、今まで、わっ、私にすら見せなかった顔だよ……っ! 私、深冬の優しい顔好きなのに。みふゆが笑ってて嬉しいのに、そんな顔見たくなくて、……見たく、なくて」

たどたどしくも、言葉が溢れてゆく。フィカはぐっと眉間にしわを寄せ、結んだ口をふるふると震わせた。

「わ、私じゃ、だめなの? わた、わたしは、我慢してるのに。あんな風に深冬がなってほしいのに、なってくれないの、分かってるけど、我慢してる、…してたもん。その、さっきは、我慢できなかったけど」

深冬はその様子を目を見開いて見つめた。そして一度瞼をくっと閉じ考えるようにすると、ゆっくりと瞳を開いた。その表情はとても真面目なものだった。

「フィカさん」
「は、い」

そして深冬はフィカを思いっきりぎゅっと抱きしめた。

「フィカさんは可愛いです! フィカさんはとてもかわいいです!」
「ふにゃっ!」
「まさかやきもちを妬いてるんだとは思いませんでした! かわいすぎです!」
「ゃ、やっ、やきっ、やきもち!? ち、ちがっ、違う! ……ぁん!」

羽交い締めにされてじたばた暴れるフィカに、それを離さない深冬。むきになってばたりばたりとお互いやっている内に、笑い出したのは深冬の方だった。

──そして時は現在まで戻る。

「だーかーらーそんなに笑うなぁ!」

堪え切れずふるふると震えながら笑う深冬を目の前に、フィカは真っ赤な顔で怒る。

「いやぁ、フィーちゃん、本当にかわ、かわいいっ……あはっ、あはははっ」
「にぎゃあーーー! 深冬ばかぁーーー! 乙女心傷つきまくりだし……もうもう、もう!」
「あはははっ、だってまさかそんな理由だなんて思わないもの」

フィカはやっぱり言うんじゃなかったと呟き、そっぽを向いた。

「でっ、でも、言い返せないでしょ深冬! そうなんでしょ!?」
「言い返せます。そうですね、あの患者さんには特に意識はかけていると思います。色々と、特殊な方ですから」
「ほらっ」
「でもフィカさんも分かっているはず。あの方は色々と特殊な力をお持ちの方。そして……珍しい症例を持たれている」
「だから、とくべつ?」
「特別なのはどの患者さんも同じですけど。ただ一つだけ違うのは、あの方の治療法が、特別だということです。あなたなら分かるでしょ? あの方が私の頭を撫でる理由も、自分の体や性格に特別気を配っている理由も」
「うん……」

フィカは深冬に抱きしめられたままこくりと頷いた。そんな彼女の頬が突然むにゅりと左右に引き延ばされる。

「ふへ」
「それにね、フィーちゃん。私は知ってますよ。フィーちゃんがあの人へ向ける笑顔も、とってもかわいいんですよ?」
「えっ!?」

フィカが顔から火を噴いて深冬から身を離した。

「今フィーちゃんが言ったこと、全部フィーちゃん自身に当てはまってるよ」

にこにこと続ける深冬と口をぱくぱくとさせるフィカ。

「フィーちゃん自身があの人に思ってる気持ち、じゃないのかな、それ」
「なッ……ちが、違うって!」
「つまり自分の気持ちを私に投影して、私がとても嬉しそうに見えて、」
「うぉおおおぉおおおぉー! だまれええええええ!!」

フィカが全力で否定するように頭をぶんぶんと振り耳をふさぎ、わあわあ叫ぶ。
それを相変わらずにこにこと見続けながら、深冬は人差し指を立てた。

「それにフィカちゃん、勘違いしてる。フィカちゃんに見せない顔、は確かにあるかもしれない。でも、フィカちゃんにしか見せない顔だってあるんだよ? ……そ、その、さっきのみたいなのもそうだし……」
「さ、さっきのってどのさっき?」
「うう、えーと。……つまり、私はフィーさんに突然あんな事されても嫌じゃなかったですしそれどころか自分からあんなことをうわーうわーぅゎー私どこまで行くんだろ……」
「ほ、ほんとに?」

深冬は両手で顔を覆っているしフィカは呆然としている。そのまま静かに時が流れた。
沈黙を破ったのは、フィカの震える声だった。

「私のこと、好き?」

深冬が両手を覆うポーズのままで答える。

「…………ええ。今はどんな好きかは考えたくないけど」

その時お互いの表情を見られなかったのは、二人にとって残念なことだったかもしれない。なぜなら二人は普段見せない「とくべつ」な顔をしていて。

(ぴんぽーん)

その時部屋に響いたドアベルの音に二人は飛び上がった。

「えっ、急患!? 誰!?」
「と、とにかく行きましょう」
「ただの迷い人かもしんないよ?」

身なりをさっと整えると二人は玄関口へ向かう。

「みひゅー、ところで結局あんたはアイツのことどー思ってんのさ?」
「それはまた今度!」
「言いくるめられてる気がするんですけど!」

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